実は浴槽だけの交換が高額になる事は珍しくありません。場合によっては50万円以上になる事もあるでしょう。実際に浴槽交換の高額な見積もりを目の前にして「この費用は適正なのだろうか」と戸惑い、不安になっておられる方もいらっしゃるのでは?
この記事では浴室まるごとではない浴槽の交換がなぜそこまで高額になっているかの訳を。そして費用を出来るだけ抑えるために試す価値のある5つの有効手段をしっかりとお伝えします。
1.浴槽交換の流れ|どこに費用が掛かっているのか
なぜ浴槽の交換が高額になってしまうのかの理由を詳しくご説明するためには、まず交換の流れを把握しておく必要があります。交換の流れをご説明しつつ「そのポイントで費用が掛かっているのか」も合わせて書いています。浴槽交換の全体像を掴みながら、順に見ていきましょう。
交換の流れその1|業者に現在の浴槽を確認してもらって見積もりを貰う
費用|掛かる事は稀。ほとんどが無料
まずは業者に現地調査と見積もりを依頼します。
- 交換する浴槽はどのような商品か(種類・サイズ)
- 浴槽の交換を完了させるにはどのような工事が必要か
- 合計の費用はいくらになりそうか(追加工事の可能性はありそうか)
業者は上のようなポイントを調査で把握し、見積書として落とし込みます。ただし現場調査に来ている担当者が実際に工事をする者とは限りませんので、その場で尋ねてもすっと答えてくれるかは分かりません。出来れば答えてくれる業者の方が信頼しやすいのは事実です。
そしてこの見積もりの段階で費用が掛かる事はほぼ無いでしょう。ほとんどの業者が見積もりは無料で行っているはずです。しかし業者によりますので断定は出来ません。念のため確認すると吉です。
交換の流れその2|浴槽の解体撤去
費用|掛かる。特に埋込式の浴槽
さて、ここから交換の工事が始まります。交換ですので今ある浴槽を解体・撤去する作業から始まります。そのまま浴室から取り出せない場合は分解して運び出し、新しい浴槽を設置するスペースを確保します。撤去費はほぼ掛かるとしても、解体費に関しては掛かるかどうかのパターンが分かれます。特に費用が発生してしまうのは埋込式の浴槽ですが、それらについて詳しくは後述します。
交換の流れその3|壁・床の取り壊し
費用|行った場合は無論、掛かる
流れその2で古い浴槽を取り出しました。古い浴槽はどうせ処分するので分解したり叩き割ったりしても問題はありません。しかしこれから使うはずの新しい浴槽はそんな訳にはいきませんよね。当然ドアを通して浴室内に入れますが、そのサイズによっては壁を取壊さないと入らない可能性があります。そうなれば壁自体を取り壊して入口の広さを確保する必要があるかもしれません。また、壁と同様に床も取り壊す場面もあります。
そうなると壁や床の取壊し費用が発生します。そして壁を取り壊したなら新たに作り直す必要も…。その分、費用と作業が増えます。
交換の流れその4|浴槽を置くところの下地調整
費用|必要であれば掛かる。
さて、浴槽を置くスペースと入口は確保しました。しかし新しく浴槽を入れる前にはこの「下地調整」という準備が必要な時があります。ただ床の上にポンと置かれていた浴槽の場合は調整が不要の場合もあります。しかし以下の場合は調整が必要でしょう。
- ただ床に置かれていても、新しい浴槽によっては勾配(こうばい)をつけて水が流れるようにする必要がある
- 浴槽下の空間が広いので、ブロック等を土台として新しい浴槽に合わせた高さ調整をする必要がある
これらが必要であれば下地調整の工事と費用が発生します。
交換の流れその5|新しい浴槽の設置・埋込
費用|埋込では掛かる
新しい浴槽を設置します。この時、もし埋込式の浴槽であった場合は再度埋め込む事になるでしょう。埋め込む作業は手間も材料も必要ですので、当然費用も掛かります。
交換の流れその6|壁・床の再構築
費用|無論掛かる
壁や床を取り壊していた場合は新しい浴槽を設置後に再び作り直します。もし本当に壁・床まで取り壊さなければいけない時は、ユニットバスをまるごと入れた方が安い場合もあり得ます。合わせて検討しましょう。
浴槽交換の流れはここまで
浴槽交換の流れは大体こんな感じです。状況によっては床下の排水管を交換したり、色々追加の工事が入る可能性もあります。まとめると以下のようになります。
工事の工程 | 費用 |
1.現地調査・見積もり | 掛からない |
2.浴槽の解体撤去 | 掛かる |
3.壁・床の取り壊し | 掛かる |
4.浴槽下の下地調整 | 掛かる |
5.浴槽の設置・埋込 | 掛かる |
6.壁・床の再構築 | 掛かる |
ここまで読まれた方はおそらくこう思われたはず。「行っているたくさんの工事に費用が掛かっている」と。その通り、つまり浴槽交換で費用が高額になるには「どれだけ工事を行ったか」が関わってきます。では次は実際にどの程度費用が掛かるのか、内約をご紹介します。
2.浴槽を交換した時に掛かる費用の内約
浴槽交換の流れとともに、どこに費用が掛かっているのかをご紹介しました。ある程度イメージが出来たところで具体的にどのくらい費用が掛かるのかをお話しします。
内約その1|浴槽本体の価格
浴槽の種類 | 価格帯 |
FRP | 1〜35万円 |
人造大理石 | 2〜120万円 |
ホーロー | 8〜135万円 |
ステンレス | 2〜25万円 |
ヒノキなどの木製 | 20〜数百万円 |
まずは当たり前ですが交換する新しい浴槽本体の価格が費用として挙げられます。上の表をご覧ください。下は数万円から、上は数百万円までと浴槽本体の価格帯は皆さんが思う以上に幅広く、ピンキリです。
- 浴槽の種類
- 大きさ
- 品質やデザイン
大体以上の3つが価格に関わってきます。あなたが求める浴槽がどんな物かで掛かる費用はここまで変わるのです。
埋め込む時の浴槽のアドバイス
浴槽を埋め込むとそう易々と交換が出来ません。もし浴槽を埋め込む時には、10万円台~のある程度品質が良いものを選んだ方が無難でしょう。
内約その2|浴槽の解体撤去・処分費
解体撤去費・浴槽処分費|2~10万円
- 解体撤去費は浴槽・その周りなどを解体する工事費用
- 処分費は浴槽などを処分する費用
ここからは工事費用になります。浴槽交換が高額になってしまうのは工事費が掛かるからとお話しました。これはユニットバスにも共通して言えることです。上の費用はあくまで目安です。浴室・浴槽の状態や地域によって、あるいは業者によって異なります。
内約その3|浴槽を設置・再び埋め込む工事費
下地調整費|2~5万円
埋込工事費|5~15万円
- 下地調整費は浴槽を置くための下地・土台を調整する費用
- 埋込工事費は浴槽を埋め込むための工事費用
埋込式の浴槽だった場合は新しい浴槽を再び埋め込むための工事費も掛かるでしょう。これも埋込ではなかった時は必要ない場合もあります。
内約その4|排水管工事費
排水工事費|5~7万円
- 浴槽の下で水漏れを起こしていた場合
- 排水管を調整し直さなければいけない場合
このような場合は排水管の工事と費用が発生するでしょう。水漏れは浴室だけでなく建物全体に被害が及びかねない一大事です。止むを得ません。5万円台が特に多い印象です。
内約その5|壁・床の取壊と再構築工事費用
壁取壊・再構築工事費|その浴室による
現状では希望する浴槽が入らない場合に壁や床を取り壊し、また再構築する費用が掛かります。どこまで工事が必要かはその浴室によりますので費用は一概には言えません。
内約その6|その他の雑費
その他雑費は大体以下の通りです。
養生費用 … 1.5〜3万円ほど
工事中、主に部屋を汚したりキズ付けたりしないために保護する費用。
交通費・駐車費 … 実費
現場までの交通費や車の駐車費用が掛かる事も珍しくありません。
内約まとめ|浴槽だけを交換する場合の費用相場
では浴槽だけを交換する場合の費用相場です。
費用相場|10~50万円ほど
これは壁取壊・再構築工事費を含まない相場です。10万円台はカンタンに浴槽が外れ、さらに安く用意した新しい浴槽がスムーズに収まった場合でしょう。50万円は埋め込まれた浴槽を解体し、さらに新しい浴槽も埋め込んだ場合に多い費用帯です。基本的に工事費が10数万円、浴槽代が10数万円の計30万円台がセオリーではあります。
工事費の有無で費用は変わる
上で書いた通り、浴槽の交換だけで50万円ほど掛かる事は珍しくありません。そしてユニットバスをスムーズに入れ替えられた場合の費用も50万円~。このようにお風呂のリフォームでは工事費用の有無でかなり費用に違いが出てしまうのです。
「ネットで調べた費用よりも高い」などと感じたとしても、浴室の状態や工事内容によって金額はいくらでも変わってしまうのがリフォームです。
3.費用を今すぐ少額に出来る5つの秘訣
さて浴槽交換の流れと費用が大体分かったところで、いよいよ次は費用を出来るだけ少額にするための秘訣を見ていきましょう。この秘訣では「そもそも本当に浴槽交換が必要なのか」から始まり、以下の2つに分けご紹介していきます。
- 浴槽交換以外の安価な方法
- 浴槽交換する中で安くする方法
そもそも本当に浴槽の交換が必要なのか?
- 長年使った浴槽の汚れ
- 経年劣化の色褪せ
- 浴槽に入ったヒビ
もしこれくらいの理由のみで浴槽を交換しようとしているのでしたら、他の手段で解決出来る可能性は充分にあります。
秘訣その1|クリーニング
費用相場|数千円〜数万円
まず浴槽の汚れでお悩みの方、クリーニングはお試しになったでしょうか? 「自分で洗ったけどダメだったからクリーニングも無駄でしょ」と断定するのは早計です。
汚れには酸性・アルカリ性があり、使う洗剤の種類によっては落ち方の度合いが変わります。プロのクリーニングはそういった汚れの判断に加えて、より効果を高めるためのノウハウも駆使します。もちろんクリーニングでも落ちない汚れがあるのは確かですが、思った以上の効果が得られる事もあります。汚れに困っているならばクリーニングも検討してみましょう。
秘訣その2|浴槽塗装
費用相場|10〜15万円前後
- クリーニングでは落とせなかった浴槽の汚れ
- 経年劣化の浴槽に色褪せ
- 浴槽に入ったヒビや割れ
これらにお悩みであれば浴槽の塗装も有効です。俗にいう「浴室塗装」と呼ばれる技術で、交換するより費用は掛からないでしょう。ただし塗装ですので業者の腕と、塗装する浴槽に種類がキーポイントになります。浴槽の塗装については浴室塗装|プロが教える利点と事例+失敗しない業者を選ぶ6つのコツを参考にしてください。
秘訣その2の注意|据置式では同じ浴槽が手に入るなら交換と費用が変わらない場合も
据置式の浴槽(ポンと置かれている状態)で今と同じ物が安く手に入る場合。塗装と交換で費用の開きが少ないケースもあります。そんな時は多少交換の費用が高くても新品にした方がメリットはあるでしょう。
秘訣その3|浴槽を外したままシャワールームにする
費用相場|10~30万円
- ワンルームマンションの一室
- 家の中の複数ある浴室の一室
その浴室が上のような場合、いっそのこと浴槽を外したまま床を整えてシャワールームにしてしまうのも手です。最近はシャワーユニットも良い物が増えましたが、シャワーユニットの入替は普通のユニットバスと同じくらいの金額になってしまうため費用を抑える対策としては微妙です。
秘訣その4|安い浴槽を手に入れて交換する
ここからは秘訣1〜3で解決できなかった場合にやはり浴槽を交換する時の対策です。交換の費用で重要になる工事費は、業者によって違いがあります。ただそれを依頼者側が意図的にコントロールするのは難しいでしょう。そこで抑えるべきはまず商品代である浴槽自体の価格です。
秘訣その4-1|大量に仕入れて抱えている問屋でFRP浴槽を安く手に入れる
平均的に1番安い浴槽はFRP製の物です。大きさでまちまちですが、FRP浴槽なら10万円以下の物がごろごろあります。さらに埋込の場合だと今後のリフォームも見越してFRPが良いでしょう。FRP浴槽であれば“秘訣その2”でご紹介した「浴槽塗装」がしやすく、再生が可能です。あるいは人造大理石でも良いかもしれません。
秘訣その4-2|メーカーのショールームは高め・新作が並んでいる
メーカーのカタログやショールームを見ていると色々な商品があるのを見て取れます。ですが費用を安く済ませたい時にショールームを利用するのは注意が必要です。お風呂は場所を取りますので限られたスペースで展示するとなるとメーカー側は特に売りたい高めの物を並べているはずです。
参考に訪れる分には良いですが、大手のショールームに並んでいる商品は高めかもしれないという事を頭に入れておきましょう。
秘訣その5|複数の業者から交換の見積もりを取る
“秘訣その4”で業者の工事費はコントロールしにくいとお話しました。もちろんそれは変わりありませんが、今見積もりを出してもらっている業者が1社だけの場合は話が変わります。その業者がすでによっぽど気に入っているなら良いですが、相見積もりをする事で工事費がリーズナブルな業者が見つかる可能性があります。相見積もりで業者の比較を行うのはリフォームの基本テクニックです。
秘訣その5-1|相見積もりをしすぎると収集が付かなくなるため、3社ほどに抑えると良い
しかし数多くの業者で相見積もりをするのはあまりオススメ出来ません。例えば5つの会社から見積もりを取りました、それらを仮にA社〜E社とします。
会社名 | リフォーム費用 |
A社 | 35万円 |
B社 | 32万円 |
C社 | 40万円 |
D社 | 35万円 |
E社 | 15万円 |
上のように5社の見積もりが上がってきましたが、A〜D社までほとんど同じ費用帯でした。しかしE社だけ他より異様に安い費用を出してきた時、あなたはどれを善しとしますか?
上のケースの場合に「実はすべての会社の工事はほとんど同じで違うのは費用だけ」というパターンは至極当たり前に起こりうる現象なのです。このパターンはA社〜D社は元請けから下請けに仕事を回し、中間マージンを上乗せして高くなっているのが理由。しかし事情を知らない方では判断がつかず、混乱してしまう事もあるでしょう。
最初は費用を確認する目的で相見積もりを取ったはずが「結局何となく不安になり高い費用を提示する業者で工事してもらった」なんて事はよくある話です。相見積もりでは無駄な混乱を避けるためにも自分が良いと思った3社ほどで終えておくと収まりがいいかもしれません。
秘訣5-2|専門で無いのに安い業者には注意する
相見積もりの続きになります。例えばお風呂リフォームの専門業者でないのに“5-1”の例のように明らかに他よりも安い見積もりを出してきたパターンの場合。しっかりとその理由を確認する必要があります。というのも専門の業者であれば豊富な知識やノウハウもあり、効率的なリフォームが出来るからこそ一件一件を安く回す事も可能になります。もちろんその逆に費用を上げる事も。
しかし専門でない業者ではその都度に仕入れをしたり慣れない作業に時間が掛かる事がほとんど。通常通り工事費を計算するとその手間分、割高になるはずです。にも関わらず安いという事は、受注したいために無理に費用を下げている事もあり得ます。
- これまでに同じ工事の経験があるかどうか
- もし「実績作りのため」等理由があった時、自分がそのリスクに納得できているかどうか
このような確認は欠かせません。
6.まとめ
「浴槽の交換が高くて困っています。この金額は普通なのでしょうか」というお問い合わせをいただく機会が増えました。リフォームの費用というのはなかなか馴染みがないだけに一般の方には分かりにくいものですよね。
この記事で浴槽交換の知識が深まり、少しでもリフォームの対策ができるようになれば幸いです。それでもやっぱりよく分からないという方は、相見積もりだけは最低限行うと良いはずです。