実はマンションのお風呂リフォームは戸建以上に施工しにくいケースが多いことをご存知でしょうか? マンションは集合住宅という特徴ゆえに、クリアしなければいけない条件が戸建よりも多いこともあるのです。
実際に2019年今現在、私たちが見積もりをするまでに何社もの業者が現場調査に来ては去っていったという案件もあります。「このマンションのお風呂はリフォームできない」そう判断されることも少なくありません。そのお部屋のオーナー様、入居者様ともにとてもお困りのようでした。
そこで本記事では、そのようにマンションのお風呂リフォームでお困りの方のために、マンションならではの注意しておきたいポイント、そしてリフォームする目的別のオススメ工法をご紹介していきます。
本記事で「なぜマンションのお風呂はリフォームしにくいこともあるのか」等を知って、できるだけ対処しリフォーム自体を成功できるためのヒントを得てください。
目次
1.マンションのお風呂の種類とそれぞれの特徴
「マンションのお風呂の種類」といっても、戸建のお風呂と比べて特に種類が違うわけではありません。しかしマンションは集合住宅という性質上、ユニットバスであることが多いでしょう。
お風呂のリフォームでは「今のお風呂の種類」に特に左右されます。まずはリフォームの工法を見る前に、お風呂の種類を軽く確認しましょう。
マンションのお風呂の種類1.ユニットバス
元々工場で作られた組立式の浴室、それがユニットバス。現在最も一般的なお風呂の種類です。ユニットバスは以下のような特徴を持っています。
- 1から作るよりもコストを抑えられる
- 下手なお風呂より防水性や機能性が高い
- 組立式なのでクオリティが一定に保たれる
一戸建てとは違って集合住宅であるマンションでは、ユニットバスを採用することで効率よく建設することができます。
ちなみに賃貸マンションで見かけるトイレ付のものは3点ユニットバスと言います。しかしトイレがついていなくとも組立式であれば「ユニットバス」なのです。
マンションのお風呂の種類2.在来浴室
在来浴室とは、その物件に合わせて1から作られたオーダーメイドのお風呂のことです。このオーダーメイドの工法を在来工法と呼びます。
昔ながらのタイル張りのお風呂や、コンクリート(モルタル)等で出来たお風呂がコレにあたります。
- 以前はユニットバスがなかったために在来工法で作っていた
- サイズの都合でユニットバスが上手く入らないので在来浴室になった
- デザイン性を意識して在来浴室にした
在来浴室になっているのは大体上のような理由です。現在では「タイル張りが好き」「ユニットバスでは高級感が足りない」という方でなければ、お風呂全体のリフォームであえて使う機会は少ないでしょう。
種類3.ハーフユニット
ハーフユニットとは、浴槽を含めたお風呂の下半分が一体化しているユニットバスです。壁の上半分はタイルやコンクリート(モルタル)になっているでしょう。
ハーフユニットの特徴は以下の通りです。
- 特に水が掛かる壁の真ん中より下がユニットバスになっているので防水性がある
- 浴槽と床・壁下が一体化しているため、カンタンに入替ができない
- 壁の真ん中より上が自由に作れるため、大きな窓をつけたりもできる
ただし、マンションの場合は「お風呂にできるスペースが狭い」ためにハーフユニットを採用していることが大半です。実はマンションのお風呂リフォームで一番困りやすいタイプでもあります。
2.マンションのお風呂リフォーム時に気をつけるべき5つの注意点
ここからはマンションのお風呂リフォーム時に気をつけたい5つのポイントを見ていきます。
注意点1.マンションの管理規約や方針はどうなっているか
分譲マンションの場合、管理規約がどうなっているのか。それがまず気をつけたいポイントになります。
戸建では所有者はまず間違いなく自分のみです。しかしマンションの場合は集合住宅なので管理規約があり、内容によっては自由にリフォームをできない可能性があります。
- 以前ユニットバスの入替でトラブルが合ったので「入替リフォーム」自体が禁止
- そのマンションをまるごと所有・管理しているメーカー企業を通してしかリフォームができない
これらは当会が実際に遭遇したことのあるマンションの規約・方針です。こういったことがあるので、リフォームする前には必ず管理規約を確認してみましょう。
注意点1-1.リフォーム時の管理組合への申請も注意
分譲マンションでのリフォーム時には、まず間違いなく管理組合へ「リフォームの許可申請」が必要になります。
それを業者側(リフォーム屋さん・不動産屋さん)が申請する時もあれば、依頼者側(お客さん側)が申請をする場面もあります。その申請は数日で許可が出ることもあれば、一週間以上かかるケースもあります。もし依頼者側が申請する約束になっている場合は注意が必要です。申請をしていないまま面倒になったので、工事日寸前に「やっぱりやってください」と業者側に連絡をしても、申請が間に合わない可能性もあります。
そうなると工事日を調整する必要が出てきたり、最悪キャンセル料を払わなければいけない事態に発展するかもしれません。
注意点2.マンションの階数|エレベーターはついているか
そのお風呂リフォームをする部屋は何階なのかもポイントになります。昔の集合住宅では5階建てなどでもエレベーターがついていない物件もあります。
例えば5階の部屋でマンションにエレベーターがついていない場合は普通より手間が掛かります。そこまでユニットバスを運び込んだり、今あるお風呂を解体したものを降ろす必要があるためです。浴槽が、重いホーロー製などであれば尚更でしょう。するとリフォームの施工賃が通常よりも高くなることもあります。
また古い物件では、階段が建物内についている狭いものしかないこともあります。その場合、最悪ユニットバス入替ではリフォームできないかもしれません。
注意点3.浴室の梁(はり)や柱はどうなっているか
浴室の梁(はり)や柱がどうなっているのかも注意しておきたいポイントです。マンションは集合住宅という都合上、今の梁(はり)や柱の状態をいじってリフォームすることが難しいでしょう。
梁(はり)がひとつ等、まだ浴室によっては対応ができるものもあります。ですがかなり形がややこしいお風呂だと、ユニットバスを無理やり入れようとしてもサイズが小さくなってしまうこともあります。また、メジャーな工法ではリフォームできないという事を言われてしまう場合もあるでしょう。
もし梁(はり)や柱が原因で市販のユニットバスを入れるリフォームが難しい時には、以下の対応が必要でしょう。
- 浴室塗装やパネル工法などの「今ある浴室を再利用する工法」を選択する
- オーダーメイドのユニットバスでリフォームしてもらう
- 元々が在来浴室の場合は、在来工法でリフォームし直す
この内、今ある浴室を再利用する工法については目的別のオススメ工法でもご紹介します。
注意点4.今の浴室の種類・広さはどの程度か
リフォームしようと思っているお風呂の今現在の種類、広さもポイントです。以下の場合には特に注意が必要です。
- 今のお風呂が狭い場合
- お風呂の種類が在来浴室
- お風呂の種類がハーフユニット
これらのケースの浴室は、ユニットバスを上手く入れられない可能性があるからです。また、ユニットバスや通常の在来工法(タイル貼り直し、バスタブ交換など)でリフォーム出来たとしても平均よりも高額になる可能性があります。壁や周りを取り壊して、また再構築する必要があるためです。
予算を多めに考えておく必要があるかもしれません。
注意点5.マンションの築年数はどのくらいか|排水管の損傷具合
マンションの築年数、これもポイントになります。マンションの築年数が目安として30年以上の場合、次のことをよく確認してください。
- 今のお風呂の種類がユニットバスの場合、メーカーに在庫があるかどうか
- お風呂の下の排水管が鉄製ではないか。また、マンション全体で排水管の修繕工事の予定はないか
この2つは古いマンションでお風呂リフォームをする際に悩みのタネになりやすい問題点です。
注意点5-1.マンションの古いユニットバスの問題点
ユニットバスの入替リフォームの場合、通常は今のユニットバスと同じメーカーの商品を使います。それはメーカーによってユニットバスの規格(サイズ)が異なるためです。
その影響で、築年数の経った古いマンションでは以下が問題が起こります。
- 大体20年以上経過していると同じ規格(サイズ)のユニットバスがメーカーにも無く、上手く入替できる商品がない
- 古いマンションだと、ユニットバスに合わせて浴室を作り、スペースに余裕がない
こうなると、スムーズにユニットバスを入替できないことになります。その結果、お風呂リフォームの費用が上がってしまい、予算オーバーになることが考えられるのです。また、予算を掛けてもリフォームできるならまだ良い方。ここまでの注意点である①管理規約や②梁や柱も影響して、通常のユニットバス入替ではリフォームできないこともあり得ます。
その場合は小さいサイズのユニットバスを入れるか、今の浴室を再利用する工法を使う他ないでしょう。
注意点5-2.マンションの排水管の問題点
排水管についても気をつけたいところです。古いマンションではお風呂の下についている排水管が鉄製でした。また建物の排水管はメンテナンスが必要な時期があります。その問題点は次の通り。
- 排水管が鉄製だとサビやすく、水漏れが起きやすい(新しいマンションはサビに強い排水管がセオリー)
- 建物の中の排水管修繕(メンテナンス)のタイミングと被ると、最悪リフォームをしてもすぐにお風呂を取り壊さないといけないケースがある
古いマンションだと、実はこの「排水管のダメージが大きくなってしまうこと」が建物の寿命と大きく結びついていました。建物自体よりも、先に排水管がダメになってしまうことが原因です。
リフォーム前に排水管の状態も考慮しておかないと「こんなはずじゃなかったのに」と思ってしまうかもしれません。
3.【目的別】マンションのお風呂リフォームで最適な工法と注意点
ここからはいよいよ、マンションのお風呂リフォームの最適な工法を目的別にご紹介していきます。
目的1.マンションの浴室を高級感をキープしてリフォームしたい時
- 今のお風呂の高級感をキープしてリフォームしたい
- 今の状態からもっと高級感を出したい
そういった目的をお持ちの方は工法よりも、まず予算をどれだけ掛けられるかが重要になるでしょう。実のところリフォームは費用を出せるなら、いくらでも上を目指すことが可能だからです。
目的1-1.特に気にしておきたい注意点
- ①マンションの管理規約
- ③浴室の梁(はり)や柱
目的1-2.高級感が目的|予算別のオススメ工法
完全オーダーメイド(在来工法・オーダーメイドユニットバス)
費用:高(数百万円)
得られるお風呂:ガラス張り、タイル張りなどの解放感溢れるお風呂など
※ただし注意点にもある通り、自由に浴室をリフォームできる必要がある
高グレードのユニットバス
費用:中(数十万円~数百万円)
得られるお風呂の例:キレイでスッキリとした浴室
※費用は既製品の場合。オーダーメイドユニットバスの場合はさらに費用が掛かるケースあり
パネル工法・シート貼り
費用:少(数万~数十万円)
得られるお風呂の例:壁の1面を木目調のパネルを貼り付けてアクセントにする
目的2.費用を抑えてマンションのお風呂リフォームをしたい時
- 賃貸用・売却用のマンションなので次の入居者を迎えるために、とりあえず費用を抑えて綺麗にしておきたい
- 浴室をキレイにしたいが、ユニットバス入替や通常の在来工法では予算が合わない
上のように、費用を抑えたい、しかし有効なお風呂リフォームをしたいという2つが目的の方は実は多いです。昔は選択肢が少なく、とりあえず業者の判断に任せるしかありませんでしたが、今は様々な工法が出てきています。
目的2-1.特に気にしておきたい注意点
- ①マンションの管理規約
目的2-2.費用を抑えてリフォームしたい時のオススメ工法
- 浴室塗装
- パネル工法
- ダイノックシート
- 浴室床シート
- 浴室ドアのカバー工法
これらは費用を抑えたい時に有効な工法です。お風呂リフォームは現在ユニットバスでのリフォームが主流。これらの工法はマイナーですので、プロのリフォーム屋さんでも実は知らない方が多いです。それぞれの詳細は説明が長くなりますので、気になる方は別記事をご参考にしてみてください。参考:入替せずにマンション寿命を延ばす風呂リフォーム奥の手6つ
また、お風呂リフォームの費用を絞りに絞る|プロが教える対策7つも参考になるはずです。合わせてお読みください。
目的3.マンションの在来浴室をユニットバスに変更したい時
在来浴室が使われている古いマンションもまだまだ残っています。そんな在来浴室をユニットバスに変更するリフォームがしたい場合。これはもちろん、ユニットバスを使ったリフォームをそのまま選択することとなるでしょう。
しかし在来浴室をユニットバスへ変更する時には、ユニットバスを入れ替えるよりも費用が高額になりがちです。もしその時に予算が合わなければ、別の工法を選ぶと良いでしょう。
目的3-1.特に気にしておきたい注意点
- ①マンションの管理規約
- ②マンションの部屋の階数|エレベーターはついているか
- ③浴室の梁(はり)や柱
- ④今の浴室の種類|広さ
- ⑤マンションの築年数はどのくらいか|排水管の損傷具合
目的3-2.マンションの在来浴室をリフォームしたい時のオススメ工法
予算が合うならユニットバスリフォーム
ユニットバスに変更するリフォームができるのであれば、それに越したことはありません。この記事の冒頭でお話ししました通り、ユニットバスは防水性が高く、マンションには最適だからです。
ユニットバスでのリフォームならば、お風呂の下の排水管などを新しくできるため水漏れ対策としても効果を発揮するでしょう。
予算が厳しいならパネル+床シート工法
ユニットバスへのリフォームが予算的に厳しい場合はパネル+床シート工法がオススメです。見た目はユニットバス風になりますので、リフォームする価値があります。
ただしお風呂の下の排水管や壁の中にあるバラ板などをまるごと交換することは難しいでしょう。老朽化のリスクとリフォームの効果を天秤にかけて判断する必要があります。
目的4.ユニットバスの入替ではリフォームできないと言われた時
注意点でもお話しした通り、マンションの色々な制限や予算の都合上、実は3種類のお風呂それぞれに「入替ではリフォームできない」と言われるケースがあります。
ただ単に費用が足りずにリフォームできない場合は仕方ありません。しかしリフォームの工法を知らなかったために放置してしまうのは惜しいです。
目的4-1.入替ではお風呂リフォームできないと言われた時のオススメ工法
- 浴室塗装
- パネル工法
- ダイノックシート
- 浴室床シート
- FRPライニング
- サビ処理施工
- 浴室ドアのカバー工法
上に挙げた工法は「費用を抑えたい時のオススメ工法」とほとんど同じです。これは浴室を再利用する工法だからです。
さらに費用を抑える時にはあえて書いていなかった「FRPライニング」と「サビ処理施工」が入っています。お風呂リフォームでは、ユニットバスの素材を再生させたり、壁の中にある鉄にできたサビを処理する工法です。これらを駆使することで今まで放置してしまっていた浴室でも再生できる可能性が高まります。
入替せずにマンション寿命を延ばす風呂リフォーム奥の手6つで詳しくご紹介しておりますのでぜひご参考にしてください。
目的5.軽いリフォーム・補修をしたい時
最後はお風呂の小さな箇所をリフォーム・補修したい場面についてです。賃貸マンションでは特に、それほどダメージはないけれど少し気になる部分をキレイにしたいという事があります。
しかし小さい、軽いところに限って「どこに頼んでいいか分からない」という事が出てきます。そんな時のポイントです。
目的5-1.マンションのお風呂を部分的にリフォームしたい時のポイント
- コーキングの打ち直し
- シャワーや水栓カラン
- 鏡の交換
上で挙げたような部分の交換は、実のところリフォーム(交換)としてはかなり安い金額のもの。安いという事は、上手く案件をコントロールしないと業者側は利益を確保することが難しいのです。そうなると大型の案件を中心に扱っているリフォーム屋さんであればカンタンに引き受けられない可能性があります。
そのような部分的な軽いリフォームを頼む時には以下のことを意識すると良いでしょう。
- できるだけ物件から近い業者に頼む
- いつも頼んでいる業者がいるなら相談してみる
- 他のリフォームがある時に一緒にやってもらう
- DIYができるなら挑戦してみる
4.まとめ
本記事でご紹介したように、マンションのお風呂リフォームでは集合住宅ならではの注意点があります。ひとくちに「お風呂リフォーム」といっても、目的は人によって様々。
リフォームをされる前には、ご自身のマンションのお風呂の特徴や規約を把握しつつ、目的に合う工法をよく吟味してみましょう。