築年数の経っているお家で昔ながらのタイル張りの浴室では、ステンレス浴槽であることは珍しくありません。
実のところステンレス浴槽にはメリットがある反面、それと同じくらいデメリットも存在します。今のステンレス浴槽を新しくモノに交換しようとお考えの方は、次もステンレスを選ぶべきか違う素材にするべきか悩まれるかもしれません。
そこで本記事ではお風呂リフォームのプロがステンレス浴槽について分かりやすくご紹介。ステンレスの特徴やメリット・デメリット、浴槽の費用相場を見ていきます。本記事を読んで、浴槽を交換する時にステンレスを選ぶ利点や、注意しておくべきことを知って、後悔のないリフォームをするヒントを得てください。
1.ステンレス浴槽の「ステンレス」とは何か?
ステンレスとはよく聞く言葉だとは思いますが、実際「何なのか?」と問われるとよく分からないはず。浴槽を選ぶうえで、他の素材と比べるためにも少しだけ知識を入れておきましょう。
1-1.ステンレスとは「鉄+クロム」等の合金のこと
ステンレスとは、鉄にクロムやニッケル等を加えた「錆びにくい合金」のことです。鉄に配合するクロムやニッケル、炭素の割合で、ステンレスの種類や特徴が変わります。
浴槽の種類を見極めるための知識としては「単なる鉄とは違ってサビにくいんだな」と覚えておけば良いでしょう。
1-2.ステンレス浴槽は在来浴室によく使われている
ステンレス浴槽は主に在来浴室で使われています。在来浴室とは昔ながらのタイル張りやモルタル仕上げのお風呂のこと。
現在、新築の浴室はユニットバスがメインであるため、築年数の長い建物や、中古物件などで目にする機会のある浴槽です。
1-2-1.ユニットバスで最も主流なのはFRP浴槽
現在メジャーな浴槽の種類は「FRP浴槽」というプラスチック系の浴槽です。ユニットバスでステンレス浴槽が採用されているモノはあまりありません。
FRP浴槽に関してはFRP浴槽とは|他種との違いと選ぶメリットデメリットをご参考になさってください。
1-2-2.ステンレスにカラーコーティングを施した浴槽もある
タカラスタンダードが出しているユニットバスでは「カラーステンレス浴槽」が使われているものもあります。カラーステンレス浴槽とは、ステンレスにカラー塗装を施したバスタブのこと。
しかしカラーステンレス浴槽は注意が必要です。
- 塗装を施しているので、そもそもステンレスの特徴である金属の光沢感はない
- 塗装がはがれたとしてもメーカーは保証してくれない
以上の点から、よっぽどカラーステンレスという物自体に愛着を感じない限り、あえて選ぶ意味はないでしょう。
2.浴槽でステンレス製の物を選ぶメリットとデメリット
ここからはステンレス浴槽のメリットとデメリットを順に見てきましょう。
2-1.浴槽の種類はどういった物があるか
さて、メリット・デメリットを挙げる前に、そもそも浴槽にはどういった種類があるのか軽くご紹介します。
- FRP浴槽
- 人造大理石
- ホーロー浴槽
- ステンレス浴槽
- 木製の浴槽(ヒノキなど)
- ポリウレタン
- 生鉄浴槽
冒頭でご紹介した通り、ステンレスと鉄は別物です。昔は生の鉄が使われていたこともありました。この中で一般的なのは色が付いている上の4つ。その中でさらにメジャーなのがFRP浴槽となっています。
2-2.ステンレス浴槽を選ぶメリット
それではステンレス浴槽のメリットを見ていきましょう。
メリット1.耐久性が高い
まず挙げられるのが「耐久性が高い」という点です。ステンレス浴槽は基本的に表面から中の素材まで、すべて金属であるステンレス製です。そのため一般的なFRP浴槽よりも耐久力が高く、長年使うことを考えるとメリットがあります。
メリット2.ホーローよりも軽い
ステンレス浴槽は耐久性が高いにも関わらず、同じく耐久性が高いとされるホーロー浴槽よりもかなり軽く作られています。(※と言うよりかはホーロー浴槽が重すぎる)
ステンレス浴槽であってもFRP浴槽と同じくらいか若干重い程度のモノもあります。耐久性を重視はしたいけども、ホーローでは重すぎてリフォームしにくいケースではステンレス浴槽を検討しても良いでしょう。
メリット3.金属的な見た目
ステンレスを選ぶという方では、これが最もポイントとなるかもしれません。他の浴槽と決定的に違い、ステンレスは金属的な見た目があります。
昔ながらの浴室に慣れているご高齢の方などは、ステンレスの見た目が落ち着くので好きだという方もいらっしゃいます。
メリット4.磨くことでメンテナンスができる
また、ステンレス浴槽は磨くことでメンテナンスができるという点もメリットです。しっかりと磨き上げることができれば、鏡のように映り込むステンレスの美しさが蘇れます。できれば磨きのプロに頼む方が良いでしょう。
2-3.ステンレス浴槽を選ぶデメリット
さて、メリットもある一方でデメリットもあるのがステンレス浴槽です。ステンレス浴槽が気になっている方は特にしっかりとチェックしましょう。
デメリット1.金属の見た目が悪目立ちしてしまう可能性がある
ステンレス浴槽は金属の見た目が悪目立ちしてしまうことも大いにあります。まだご自身のお家で家族しか使わないという場合はよいでしょう。しかし賃貸・売買などで他の物件と見比べられる時には、ステンレスは古い印象を与えることもあります。
ただ好き嫌いで判断せず、その時のケースにあった判断をした方が良いかもしれません。
デメリット2.FRP浴槽より商品代が高い
最もメジャーなFRP浴槽に比べ、商品代が高いのもステンレス浴槽のデメリットです。
浴槽をステンレスにしようかFRPにしようか悩むことが多いのは、在来浴室で小さめのバスタブを据え置きする場面でしょう。その場合、耐久力的にはステンレスに軍配が上がりますが以下のポイントが問題になります。
- 小さいバスタブを据え置きにする場合、そもそも交換がカンタンで費用もそこまで掛からない
- 小さいバスタブなので商品代もそこまで掛からない
- ステンレスを磨いてメンテナンスする時もある程度の費用が掛かる(数万円)ため、もはや交換した方が良い可能性もある
こうなると、浴槽をリフォームする場合には結局バスタブ自体を交換してしまう人が多いです。そうなると商品代の安い方が選ばれやすいので、ステンレスがFRPに比べて値段が高い点はデメリットとなります。
デメリット3.水垢やキズが目立ちやすい
またステンレスは汚れにくい代わりに、金属なので水垢やキズが目立ちやすい点もデメリットです。定期的にしっかりと洗ってキレイに磨ければ良いですが、粗いタワシなどでこすってしまうと表面にキズがつきます。
キズがつくと水垢がつくペースも早まり、結局は水垢を放置してしまうことも珍しくありません。
デメリット4.ステンレス浴槽は塗装しにくい
さらにステンレス浴槽は塗装しにくい点もデメリットです。埋め込んでいる浴槽や、20年以上経ったユニットバスをリフォームする時、様々な理由で費用が高くなることが多いです。
そんな時に役立つのが浴槽の塗装。最も相性がよいFRP浴槽であればスムーズに塗装できることが多いですが、ステンレス浴槽では専門の職人であっても塗装を引き受けてもらえないこともしばしば。塗装ができたとしても、腕の良い職人が施さない限り、剥がれてしまうことも。
次にリフォームする時にステンレス浴槽であることが障害となってしまうことが充分あり得ます。
浴槽の塗装については浴室塗装|プロが教える利点と事例+失敗しない業者を選ぶ6つのコツにて詳しくご説明しています。
デメリット5.機能性のついた商品がない
また、ステンレス浴槽は他の種類のようにジェットバスや何か機能性のついた商品がほとんどありません。後付け商品を取り付けるのもやりくにいでしょう。
デメリット6.ステンレスでも錆びることがある
そしてステンレスといっても「サビにくい」ことがウリなので全くサビないわけではありません。表面についたサビは磨けば落とせますが、メンテナンスをしないと水垢やキズ等と相まって見た目が汚くなってしまうこともあります。
ここまでステンレス浴槽のメリット・デメリットを見てきました。人によってはステンレスの見た目が好きで選ぶ方もいらっしゃいますが、後々にリフォームする時のこともしっかりと見越した判断も必要になります。
3.ステンレス浴槽の価格と交換時の費用相場
次はステンレス浴槽の価格を見ていきましょう。
3-1.ステンレス浴槽の価格帯
ステンレス浴槽の価格帯
5~30万円
改めて調べたところ小さいバスタブ(膝をまげて1人で入る浴槽)だと10万円以内。一般的な大きさだと20万円以内、一部30万円弱となっていました。(※ただし商品によって値段は際限なく上がるため参考程度に)
メリット・デメリットの項でもお伝えした通り、FRP製より若干高めとなっています。
3-2.浴槽を交換する費用相場
浴槽自体の価格は上で書いたようにまだ分かりやすいのですが、この「浴槽を交換する費用」は実はリフォーム時に思わぬ問題になりやすいポイントです。
挙げている費用相場もあくまで相場であるため、当然安くなることもあれば、バスタブの交換だけであっても費用が高くなってしまうことも多いです。浴槽交換では以下の要素が費用に関係します。
- 浴槽の価格
- 業者自体の工賃
- 浴槽の状況
3-2-1.交換リフォームの時に特に問題となりやすいのは「浴槽の状況」
寸前に挙げた「交換時に費用と関わる要素」の中で、特に問題となるのは「浴槽の状況」です。浴室のリフォームは特にややこしく、実はその家ごとにお風呂や浴槽の状況が違います。
例えば浴槽が何の素材なのかによっても工事費が変わったります。これは浴槽の重さや硬さによって、運ぶ職人の人数や、浴槽を分解する時の作業時間が変わってしまうためです。
そういった理由から、実際にリフォーム費用がいくら掛かるかは業者さんに現地調査を依頼して、見積もりを貰うまで分かりません。ネットで調べた費用を見て、あらかじめ予算を決めてしまうと後で「ズレ」が生じますので注意しましょう。
浴槽の交換について詳しくは浴槽交換がなぜ高額?その訳と今すぐ少額に出来る5つの秘訣をご覧ください。(←※この記事ちょっと詳しく書きすぎたので、パッと読んで分からなければ当会に電話してもらえば口頭でご説明します)
5.まとめ
現在はユニットバスでのリフォームが一般的になってきたことから、新しくステンレス浴槽が使われる機会がだんだんと減ってきました。しかし金属の見た目や他にはない特徴から、今でも好んで選択する方もいらっしゃいます。
本記事で挙げたメリット・デメリットをしっかりとご覧になって、ステンレス浴槽を選ぶかどうかを判断する材料にしていただけると幸いです。